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つむぐマグノリア2 先代鳴柱 橋本文男

更新日 2020/12/18(金)

20211/21(木)

 

13:3014:30 震災がもたらした奇跡と軌跡(橋本文男)

14:4515:30  インタビュー(山本)Q&A「土・微生物・窒素に聴く」

 

 

稲田の達人

 

 福島県岩瀬郡(現在の須賀川市)の稲田地域に2人の達人がいた。従来の農協というシステムから飛び出し、日本一美味い米を作ろうと、オリジナルの組織JRAPを創始した伊藤俊彦。その卓越した理論・組織力・行動力は、都会に「大地を守る会」を生み出し、やがて福島を襲う放射能被害にも敢然と立ち向かっていくことになる。その伊藤が言う。「JRAPの頭脳は橋本文男だ」と。左脳的伊藤に、右脳的橋本という図式なのだろう。「美味い米の秘訣はリン酸にある」と、2人の達人はそれぞれ辿ってきた道、別方向から同じ答を出している。窒素・リン酸・カリ、作物の栄養・美味しさ・安全性、どれをとっても欠かせない3つのミネラルだ。橋本は同じ橋本姓をもち、関西在住の農の達人、バイケミ農法の師匠の元、ミネラルの奥深い世界に入っていく。米国のハワード農法、ドイツの農法、そして古き日本の叡智を探求し、竹(パウダー)を用いる農法に行き着く。そしてそれが、自らの地元で育まれてきた会津農法に通じていることに気づかされることになる。

 後に学ぶことになるバイオダイナミック(BD)農法が「太陽の愛」と言うならば、会津伝統農法は「月の叡智」と呼べるもの。太陽のような熱い志しをもち、世界中を駆け巡り、そして足元に月の叡智が輝いていたことを発見したのだ。

 

J-RAP: https://ssl.j-rap.co.jp/

参考:『それでも、世界一うまい米を作る』(奥野修司)

   『誰にでもわかる肥料の知識』(浪江虔)

 

妻を思う・家族を思う

 

 地元の農業高校を卒業した橋本文男は、栃木県でのハウストマトの研修を皮切りに、自前のハウス農業を開始。24歳で結婚、一男二女、2人の孫に恵まれた。ある日、農薬に負けて手が荒れる妻の姿に、脱農薬・有機農法の道を決意する。アレルギーに加え、リウマチという病を抱えながら、妻は献身的に夫を支え続けた。橋本が多くのものを学び、身につけ、やがて消費者からも絶大な支持を受ける美味しい野菜を作り上げていった背景に、妻や家族の支えがあったことは想像に難くない。長男もまた、そんな父の後を追うように農業研鑽の道を辿っていく。だが介護の道に進んだ長女は「農業なんて汚いし、辛いし、儲からないし、自分は嫌だ。」と、父を避けるようにして生きていた。その長女が、やがて真に父を尊敬し、農業のもつ奥深さに触れ、植物の色・香り・しぐさの観察から、生育に必要な情報を読み取り、虫たちの声を聴いて畑づくりをする農の達人への道を突き進むことになろうとは、この時、想像すらできなかっただろう。

 

放射能に立ち向かう

 

 苦労がありながらも、幸せを噛み締めて農業に励んでいたある日、突如襲った大地震。そして放射能事故。福島第一原発から西へ80km地点にある橋本農園もまたその被害は免れなかった。「作物を作ってはいけない」「作ればその野菜は殺人兵器になる」農業人生でこれほどショックな出来事があっただろうか。何という試練を神様は与えてくれたのだ!何が起きてどうなっているのか、混乱・不安・怒り・落ち込み、先行きの見えない闇の日々。そんな中、長女がもたらした一条の光。「来月から須賀川の保育園で農業講座の勉強会が始まるからぜひ出席して欲しい」予想も期待もしなかったその勉強会で、橋本は衝撃を受け、やがてそれは赤々と灯る希望の灯になっていった。「農業の専門家でもないシュタイナーが言うことは、自分が長年疑問に思っていたことに、ことごとく答を出してくれている」・・・夢中になった。そして自らその本場、ドイツに連れて行って欲しいと申し出ると、それが20149月に実現した。現地の空気、そして口に含んだ土から、やるべきことを語る声が聴こえてきた。先祖から代々受け継いだ、あの鏡石の田んぼを畑にしよう。バイオダイナミック農法研鑽を積む修行の場として提供しよう。そこで世界一美味しくて安全な野菜を作ろう。「福島の野菜は食べたくない」という人たちにも喜んで食べてもらえるようにいつかなろう。

 バイオダイナミック農法の真髄、動植物の力を借りた大地を癒すプレパラートを、無心に撒布し続けるうちに、素晴らしい結果となって結実する。放射能レベル0.28uSV/h から、基準値を大きく下回る 0.04uSV/hへと下がっていたのだ。橋本の思いが実現した奇跡とも言えるだろう。放射能事故という試練によって歩んだ軌跡は、一つの奇跡をもたらしたのだ。

 

雷親父・竹の翁

 

 橋本は最初、正直、神様を恨む日もあった。でも神様はこんなプレゼントを用意してくださったのだと今では心底感謝している。昭和一桁生まれの父は優しい人だったが、間違ったことに関しては雷のように怒ったと言う。そんな父から多くのことを学んだものの、ただ父のように子どもたちに教えるのは、自分は苦手だった。怒らなくていいところを怒ってしま

ったり、口に出して表現する言葉が見つからなかった。ただ自然の声を聴き、自分の中にいるもう一人の自分と会話するのは好きだった。山本と尾竹、両名と3人で一緒に泊まった日「橋本さんはずっと独り言言ってた」「誰かといつも対話している」と言われ、自分でも何となく気づいていたのは、子どもの頃から聴いていた声は、人には聴こえないのだということ。そして、いつの頃からか、傍に寄り添うように竹があったこと。竹をとり、チップにし、螺旋の機械で回し、発酵させる、手間暇かけて作る竹パウダーは、今や橋本の代名詞にもなっている。竹はかぐや姫、月と深い関係にあり、会津伝統農法と、ヨーロッパ生まれのBD法を結びつけてくれる仲介者だ。竹の遺伝子は人間と同じ48節の数は脈拍と同じ72橋本の中いるもう一人の自分と繋いでくれているのも竹なのかもしれない。

 螺旋の機械から竹が生まれ変わって出てきて、熱を持って発酵の過程を辿る瞬間、喘息持ちの孫は呼吸が楽だと喜ぶ。そして自分も幸せな気分になる。自分はこの思いを竹にこめて孫たちに残していく翁になる。

「竹の声が聴こえるか?すくすく竹が伸びていく時、爺ちゃんは、カサカサ鳴るその葉っぱの先にいるよ。」

 

申込フォーム:https://form.os7.biz/f/43c9f664/


<鳴柱桑島慈悟郎と橋本さんの被るところ>

・卓越した技能

・自然の音を聴き分ける耳

・聞こえないものを聴く力

・古き叡智を現代に蘇らせる力

・厳しく優しい弟子の育成